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「お答えできません」

オレははっきりと、怒りに顔を崩した自分の主に答えた。
その言葉を聴いて信長は立ったままはたとにらみつける。

「お前はつくづく嘘は付けぬ男だな。「知らぬ」といわず「答えられぬ」という。
 知っておるなら申せ!成政はどこにおる!」

信長の手が刀にかかる。
オレは動じずにただ前一点だけを眺めていた。

佐々と約束した。
だから何があってもオレは……オレは黙りとおさなきゃならない。

すらっと白銀が視界に入る。
信長が、刀をぬいた。
それでも動じなかった。
佐々が黙っていった意味がなくなる。
あいつはかえでのことを思って……あいつなりに思って黙っていったんだ。
オレが踏みにじる事はできない。

「だ、だめーっっ!!」

不意に甲高い声が入った。
かえでだった――



何とか間に合った。
やっとついたかと思ったら下人たちがわあわあ騒いでる。
あわてて利家の部屋へ案内されてみれば、信長が刀をぬいているもんだから、かえではあわてて信長の腕にしがみついた。

「かえで?」

信長がこちらを向く。
なぜ邪魔をする、とこちらですら斬らんという表情で、かえでを見ている。

「利家君は……利家君は成政さんとの約束を守ってるだけなんです。だから!」

「かえで……」

利家が驚いた表情でこちらを見ている。
なんでそのことを知っている、といった表情で。
かえでは信長と利家の間に入り、信長に対して頭を下げた。

「だから、斬らないでください」

信長が声を荒げない。
聞いてくれたのだろうか。
そう思って下げた頭を再び上げ、信長の顔を見ようとした。

「たわけっ!!」

信長が怒鳴る。

「お前にはわからんだろうて!わしが成政をどんなに信用し、どんなに大事に思うているか!!」

「御屋形様ぁ!」

秀吉の声だ。
信長の後ろからする。
何かいおうとしたがそれより先に信長がまくし立てる。

「よしサル乱波を放て。成政の情報を何でもよい、吸い上げるのだ。二言は聞かん。いけ!」

「……」

「いけっっ!!」

「は、ははっ!!」

秀吉はさっさと追い出される。
そうしてしばらく利家とかえでをにらんだ後、急に信長はくるりと向きを変えて部屋を出て行った。

「貴様らはそこに座っておればよい。もしも骸が見つかれば、貴様らも同じようにしてくれるわ!」

足音が遠くなる。
遠くなってから利家がぼそりと、かえでに言う。

「お前、佐々は帰ってくると思うか?」

あまりにもいつもの利家と違ったからかえでは戸惑う。

「かえって、こないかもしれないの?」

「お前、あの話を聞いてたんじゃないのか?」

「ううん、違うよ」

かえではそれからゆっくりとそれは夢で見たことだというのを話した。
夢なのに、利家は何一つ疑わずに信じて聞いてくれた。

「お前らしいな。時代を超えたんだ。そのくらい変なことがあってもおかしかねぇよ」

そういってフッと笑った。
だがその笑みはすぐに畳に向いて、そうして畳にいくつかのしみを作り始めた。

「オレは……黙ってなきゃいけないのか?
 本当に、佐々が……危険な目に遭ってるかもしれないって言うのに……オレは……」

「利家君」

「ああ、そうだ。約束したんだ。あいつはそのために覚悟して行ったんだ。かえで、お前を生かしたいために……
 そのための約束だ。破っていいわけがない。だけど……オレは……」

利家は苦しんでいた。
成政とした約束と、成政の身を案じる心が、葛藤を続けている。
どうしたらいい?
かえでは自分に聞いてみた。
そりゃ、一番いいのは成政さんが見つかれば……


そうだ、見つかればいいのだ。


「利家君、成政さん、どこにいたか知ってるの?」

「いえねぇよ」

「大丈夫よ。成政さんがいったのは」

「わかってる。お前の言いたいことはわかってる。お前一人に話すなら大騒動にはならないっていうんだろ?
 織田家全体での騒動にならないって」

「うん」

「ばか。そういうわけじゃねぇんだよ。あいつはお前の事を案じてるんだ。
 下手に教えて下手に動かれちゃ……オレは佐々に事後の事頼まれてんだよ。お前の事とか……」

「じゃあ私と一緒に探してよ。私のこと頼まれてるんでしょ?」

かえでがいうと利家はきょとんとして顔を上げる。
まだ涙のあとが筋になっている。

「信長様のいうとおり、ここでじっとしているつもり?それじゃ見つからないかもしれないんでしょ?
 それに、私も成政さんに言わなきゃならない事があるの。だから」

すっと一息すって利家にびしっと指を突き出す。

「私も探すから、一緒に探して。私が危なくなったら、守って」

「…………は、はぁ?お前それが守ってもらう人間の口かよ!?「守ってください」とか言えよ。っつーか自分で自分の身は守れ!」

ぶーたれる利家。
思わずかえでは笑った。

「……なんだよ今度は」

「やっといつもの利家君に戻った」

けっ、と利家がふくれる。
面白そうにかえでが笑っていると、利家もようやく機嫌をとり戻し、そうしてゆっくりと口を開いた。

「かえってお前のほうが見つけられるかもしれないな。相手は伊賀のやつら。忍だ。
 いくら人数増やしたところで見つかるかわからねぇな」

「じゃあ……」

「いや、手はある。あいつらもお前を狙っているらしいから。お前が行けばあるいは……でもキケンだからな。絶対無茶すんじゃねぇぞ」